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2個入れか1個入れそれとも5個入れ。失われる?真珠養殖の挿核技術。

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愛媛のIさんに、今年のアコヤ真珠市況を伺っていたら、5ミリ、6ミリサイズの真珠が品薄だという。 それを聞いて、以前に取り上げた昨年の真珠の品評会のニュースで、違和感を感じる部分があったことを思い出した。

このニュースである。

宇和島で真珠の品評会 来月には入札会

品評会には、昨年3月以降に核入れされた真珠196点が出品。光沢や巻き、キズの有無などを審査委員らが慎重に見極め、入賞15点が決まった。
初めて真珠母貝に珠を2個入れる画期的な技術に挑戦した同社の細川陽一社長(46)は「表面が滑らかに仕上がった。今後の養殖方法に可能性が見えた」と6回目の大臣賞受賞を喜んだ。
http://www.sankei.com/west/news/161119/wst1611190023-n1.html

違和感を覚えたのは「初めて真珠母貝に珠を2個入れる画期的な技術に挑戦した」という部分だ。
というのも、真珠母貝に珠を2個入れる技術というのは画期的でも何でもなく、昔からある技術なのだから。

アコヤガイのからだ(ミキモト真珠島サイトより)

 

真珠養殖のための手術はこの内臓部に小さな切開口を作り、生殖腺に外套膜の切片と核を送り込む作業である。
(ミキモト真珠島アコヤガイのからだ ) 
http://www.mikimoto-pearl-museum.co.jp/pearl_mechanism/akoyagai_body.html

真珠養殖でアコヤ貝の生殖巣に核(貝殻を削った珠)を2個入れる技術を「2個入れ」という。体内にある足筋を挟んで2箇所にいれる。対して1個しか入れないものを「1個入れ」という。


アコヤ貝はそう大きな貝ではないので、「2個入れ」の場合には小さめの核しか入れられず、できあがる真珠は、たいてい5~6ミリサイズの真珠が2個になる。
「1個入れ」は可能な限り大きな真珠を作ろうとするためにサイズの大きい核を1個だけ入れる。通常は7~8ミリサイズだ。大きなアコヤ貝を使えば9ミリも可能となる。

1990年代に8~9ミリサイズのアコヤ真珠が大珠(オオダマ)と呼ばれ、市場価格も高かったために、「2個入れ」から「1個入れ」にシフトする養殖業者が増加したという経緯があるのだ。

(ちなみに昔は7ミリも大珠カテゴリーだった。人工採苗の品種改良によってアコヤ貝も大きくなっていき、8,9ミリのアコヤ真珠養殖が可能になった。)

話は戻って、

「5ミリ、6ミリの真珠が品薄である」そして「初めて真珠母貝に珠を2個入れる画期的な技術に挑戦」という2つの事実。

つまりは、「2個入れ」を得意とする技術者はもういなくなってしまったのだろう。確かに引退している年齢だ。90年代以降に真珠養殖の挿核技術を習得した場合は利益の取りやすい「一個入れ」だろう。

ところで、タイトルの「5個入れ」はアコヤ貝に5~6個の核を入れる手法である。出来上がる真珠は3ミリ、4ミリである。この技術者は極少ない。

*ネット上に一つの大きな貝に大量の真珠ができている画像がでているが、あれは淡水真珠である。
外套膜に「他の貝の外套膜の切片」をいくつも埋め込むもので、核を使わない。そのため丸い真珠ができない。

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