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エンハンスメントの流れ - 真珠製品ができるまで -
真珠の加工処理には、大きく分けて下の2種類の処理があります。
- エンハンスメント
- トリートメント
エンハンスメント(加工)(翻訳:強化)は、その宝石の本来持っている美しさを引き出すことです。
一方トリートメント(改変)(翻訳:治療)は、欠点を隠す、あるいは美しさを人為的に付け加えることを指します。
エンハンスメントはお化粧のような事でトリートメントは美容整形のような事とよく例えられます。
真珠に関しては、加工はエンハンスメント、その他の改変処理はトリートメントと定義されました。
現在では、天然真珠でも養殖真珠でも加工が行われない物はほとんどありません。
つまり、エンハンスメントが行われているということです。
では、エンハンスメント(加工)とは一体どのような事をしているのでしょうか?
具体的には下の4つの工程があります。
- 前処理
- 漂白
- 調色
- 研磨
以上、4つの工程を一つ一つ解説していきます。
1. 前処理 - 真珠のテリを強化 -
漂白を促進するために行う工程で、前処理として真珠を1日以上アルコールに浸します。
すると、真珠層中のタンパク質の黄色色素の一部が溶け出し、黄色みがやや薄くなり、より白さが強調されます。
また、アルコールにより真珠層が収縮することで、テリが向上する傾向があります。
2. 漂白 - 真珠の黒ずみを取り除く -
過酸化水素水(H2O2)の薄い水溶液や、アルコール溶液に真珠を浸し、
その酸化作用で真珠層の間等に存在する異常沈着のタンパク質、メラニンと称する焦げ茶色の有機物等を除去します。
過酸化水素水は、コンタクトレンズの洗浄剤や、食品の数の子の漂白にも使用されているごく一般的な漂白剤です。
真珠の場合、真珠貝の生殖器の中に核を挿入し真珠層を形成させるのですが、
その際に核と真珠層の間等に存在する、不純物(異常沈着のタンパク質、メラニンと称する焦げ茶色の有機物等)を除去に使用します。
真珠内部の異物による黒ずみを取り除くことは、真珠層から生まれる色や輝きをより鮮明にすることです。
言い換えれば、真珠本来の色や輝きを邪魔している異物を取り除くことにより、本来の色や輝きを取り戻す手伝いをしています。
真珠層を痛めないように、低温下で時間をかけてゆるやかに反応を見ながら進めますが、まれに加工キズと呼ばれる損傷が発生する場合があります。
最近、この漂白だけでとどめて(調色せずに)商品化したナチュラルゴールドや、ナチュラルカラーなどは、これに該当します。
3. 調色 - 真珠の色を揃える -
真珠の成分は「炭酸カルシウム 92.64%、タンパク質 4.49%、水分 0.59%、その他 2.28%」です。
真珠層は炭酸カルシウムの結晶層とタンパク質の層交互にがかさなった層状をしています。
そして一枚の結晶の平均的な厚みは0.3ミクロン、タンパク質の層は0.1ミクロンで、これらの層が数千層と積み重なって真珠層が出来ています。
仮に1ミリの真珠層を考えた場合、炭酸カルシウム結晶の薄膜の枚数は2,500枚にも達します。
このように多層膜の真珠層内部に染料を浸透させますので、擦ったりして色が落ちることはありません。
アコヤ真珠というのは本来ほんのりとさす淡いピンク味を持っていますが、漂白の段階でそのピンク味まで漂白されてしまう場合があります。
あくまで、元のピンク味を補う為のものですので、調色によってその真珠が持つ
本来の美しさを最大限に引き出すことができますが、それ以上に品質を上げることはできません。
※勿論、調色によって真珠の価値が下がるようなこともありません。
4. 研磨 - 潜在的な美しさを取り戻す -
真珠層の表面に微小な凹凸がある場合、テリが低下するのは当然のことです。
真珠の研磨には異なる2種類の方法があります。
酸洗い
これは、真珠層の構造を利用した方法です。
桶の中に真珠と薄い酸を入れて回転させることで、傷んだ結晶層を数層むいて新しい層を出す方法です。
※真珠は、酸(汗)には弱いので真似しないで下さい。
バレル研磨
これは、工業分野で広く行われている方法です。
ポットのような容器の中に、真珠とくるみの殻を粉にしたものを入れて高速で回転させ、真珠表面を滑らかにする方法です。
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