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タヒチ黒蝶真珠とミスタヒチとゴーギャン。

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画家のゴーギャンが書いたノアノア(*いい匂いという意味である)というタヒチ滞在記にこんなくだりがある。

ある日、いつもながらのユダヤの行商人が―こいつは大陸ばかりか海まで荒らしに来ている。―金めっきした銅製の宝石のはいった箱をもってこの地区へやってきた。彼が品物を並べると、人々がとり囲んだ。一対の耳輪が手から手へわたり、すべての瞳が輝き、女たちはみんな欲しがった。
テフラは眉をしかめて、私を見た。彼女は耳輪が欲しいのだ。目がはっきりそう言っている。私は素知らぬふりをした。
彼女は私をすみへ引っ張って行った。
「あれが欲しいの」
私は、フランスならあんながらくたはやっと二フランするかしないかだ、それに銅製だと注意した。
「あれが欲しい」
「しかし、あんなくだらぬものに二十フランも払うのはばかげているよ。だめだ」

「ノアノア」ポール・ゴーギャン (著), 大島利治 (翻訳)

ゴーギャンがタヒチに滞在していた1890年代は、御木本幸吉が鳥羽で真珠養殖の実験を重ねていた頃だ。
タヒチには黒蝶貝は生息していたが、天然黒蝶真珠は数万の貝から数粒取れるかどうか。普通の人は真珠など見たことさえなかっただろう。
その頃、タヒチ女子に人気のあった装飾品は、銅製の耳輪だったのだろうか。(髪に飾ったいい匂いのする花でなく。)

ゴーギャンの描いたタヒチ ゴーギャンの描いたタヒチ


黒蝶真珠のブラックカラーが天然の真珠カラーとして、米国宝石学会(GIA)によって認知されたのが1976年。
だから、宝石としてのタヒチ黒蝶真珠は比較的新しい。
 タヒチで黒蝶真珠が生産され始めたのは1970年頃からだ。もちろん日本人技術者が挿核を担っていた。タヒチ黒蝶真珠がブームになったのは1990年代だろうか。今ではタヒチの特産といえば黒蝶真珠になっている。

養殖真珠は仏領ポリネシアで、観光産業に次ぐ2番目の経済的規模を誇り、主要な輸出産業でもあります。この業界で約7,000名が働き、主要な産地はツアモツ諸島、ガンビエ諸島、ソシエテ諸島です。特にツアモツ諸島とガンビエ諸島の発展にとって、真珠は不可欠な役割を果たしてきました。生産品の多くは、主にパペーテと香港で行われる競りの後、アジア、米国に輸出されます。(タヒチ観光局のサイトより)
http://www.tahiti-tourisme.jp/

当然、Miss Tahiti 2016の首を飾るのも黒蝶真珠のネックレスだ。
(ミス***にはやはり真珠ですね。)http://www.tahiti-infos.com/

黒蝶真珠をするミスタヒチ達 500フラン(約500万円)の黒蝶真珠をするミスタヒチ達 ミスタヒチ ミスタヒチ1 黒蝶真珠ネックレスをしたミスタヒチ 黒蝶真珠ネックレスをしたミスタヒチ2

タヒチ黒蝶真珠は真っ黒なだけではなく様々なカラーがある。
人気があるのはピーコックグリーン。他にブルーブラック、ナスビ色、チェリー色、等々。天然真珠では滅多にでない色だ。

https://www.flickr.com/photos/pearlparadise/with/25033143693/ https://www.flickr.com/photos/pearlparadise/


*画像はpearlparadise(https://www.flickr.com/photos/pearlparadise/)さんからお借りしています。

最後にゴーギャンのタヒチ滞在記ノアノアの続き。

「あれが欲しい」
そして、目にいっぱい涙をため、熱をこめてしゃべりまくった。
「それじゃあ、あなたはあの宝石が他の女の耳についているのを見ても恥ずかしくないの。奥さんに耳輪を贈るために、馬を売ろうかと話している男の人もいるっていうのに」
私はこうした馬鹿げたことをゆるすことはできなかった。今回は、邪険に突っぱねた。
テフラは、いいふくめられてもなお、じっと私をみつめていた。何もいわずに、彼女は泣いた。
私はそこを立ち去り、また戻ってきて、ユダヤ人に二十フランさしだした……たちまち、ぱっと太陽が顔をだした。

「ノアノア」ポール・ゴーギャン (著), 大島利治 (翻訳)

 ゴーギャン、奥さん(推定14歳)に弱すぎるな。(*ノアノアはゴーギャンの妄想がかなり入ってるらしいです。)

現在では馬を売らなくてもタヒチ黒蝶真珠の耳飾りくらいなら買えるわけだけど。

参考リンク

タヒチ観光局/ タヒチの黒真珠

パールミュージック/タヒチ 黒蝶 真珠 パール ピアス 約11.0mm

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