滋賀県琵琶湖の淡水真珠BIWAはもう終わってるコンテンツなのにの話。
というニュースがありました。
琵琶湖で採れる淡水真珠はビワパール(BIWA)と呼ばれてアメリカ等に輸出されていた歴史があるのです。それももうすっかり過去の話です。
ニュースでは生産量の回復を目指すということですが。
何故、今頃???
生産量が落ち込んでいる県内の淡水真珠産業を再興させようと、県は「(仮称)県淡水真珠振興計画」の策定に乗り出す。二十四日の県議会環境・農水常任委員会で素案を示した。生産量を現在の倍近い年間五十キロまで回復することを目指す。
県水産課によると、琵琶湖の淡水真珠生産は一九三〇年に開始。七一年には生産量が六千二百四十一キロにまで達したが、八〇年代以降は水草増加など水質環境の悪化で、母貝となるイケチョウガイが育たなくなった。http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20171125/CK2017112502000030.html
「生産量を現在の倍近い年間50kgまで回復することを目指す」とありますが、28kgを50kgに増やしたところで、どうにもなりません。中国の淡水真珠の生産量は1000トンを超えているからです。
1980年代、中国は世界最大の養殖真珠の生産国になった。2010年、アコヤガイから採取される海洋養殖真珠の生産量は20トンで、淡水養殖真珠は1500トンという圧倒的な生産量を記録した。一方、同じ年にオーストラリアで生産された南洋養殖真珠は10トンである。長年、中国産の養殖真珠と言えば大量生産や低価値や比較的低い品質といったイメージがつきものだった。しかし最近の発展によって、こうした状況は変わりつつある。
中国の真珠産業:生態学的負荷の指標 「2013年02月04日 サリーム・H. アリ と ローラン・E. カルティエ」
なんと1500トンです。そして品質も向上してます。
琵琶湖淡水真珠の生産量のピークが6241kg。たった6トン。
現在は淡水真珠が欲しければ香港や中国に買い付けに行けばいいのです。
また、以前このブログにも書いたのですが、ベトナムのニンビンでも淡水真珠の養殖が行われています。
(記事 ベトナム世界遺産ニンビンの淡水真珠養殖場)
ニンビンの、当の真珠業者によれば、ニンビンには天然の真珠母貝が豊富にあり、2017年は年間2万個の真珠母貝を準備しているとのことでした。つまり、ベトナムの業者一社でも、滋賀県が目標とする50kgの生産は難しくはないのですね。
とにかく、滋賀の淡水真珠養殖は「産業」としては完全に終わっているのですが。
どうして、滋賀県は今頃こんな振興計画を?
再び「中国の真珠産業:生態学的負荷の指標 」から引用します。(強調は筆者。)
真珠の生産は特徴的に2つの傾向があり、それらは現代の中国が向かう開発方針にとっても中核である。第1に、(真珠の)品質と利益を高めるには、よりクリーンな生産方法と革新を実現させるしかない。第2に、短期的な汚染は深刻な長期的影響を必ず引き起こす。真珠貝は優れた環境指標であるため、今では変化は目に見えて明らかだ。真珠産業は中国の社会経済的な興隆の縮図であるだけでなく、沿岸部や内陸部の開発にまつわる多くの環境問題の象徴でもある。
真珠貝は優れた環境指標であると。
滋賀県は、環境指標として真珠の生産量を使いたいのではないか?ということに思い当たりましたが。
表現は違いますが、このことに触れていたのはBassingかわら版Blogさんでした。
「近年は水草の刈り取りなどが功を奏し、生産量は回復傾向にあるという」(略)
草津市が採算化を断念したビワパールを県が振興しようとしてる理由は、上の引用部分の意味するところを考えればよくわかります。「刈り取りなどが功を奏し」てる事例がほしいわけです。
なるほど。
真珠振興を理由に水草の刈り取り等環境整備の予算を確保したいということもあるのでしょう。
そして、草津市が考えていたビワパールの採算化は失敗したんですねえ。
繰り返しますけど、淡水真珠は中国(将来はベトナム)産を買ったほうが安くつくわけなのです。