世界最大の真珠のニュース。本当に真珠?本当に価値が100億円?

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本当に真珠?

 フィリピンで世界最大の天然真珠が見つかったというニュースがあった。重さ34キロである。オオシャコガイの中から見つかったもののようで、画像をみると、丸いわけでもなく、それほど美しいものではない。
これ本当に真珠?と疑問に思う人もいるだろう。
フィリピンの世界一大きな真珠?! 

 フィリピンで発見の真珠、「世界最大」か
フィリピン・パラワン島沖で発見された重さ34キロもある真珠は、天然真珠として世界最大かもしれないとフィリピン当局が発表した。本当に世界最大かどうかは、宝石鑑定人の判断待ちという。 パラワン当局のアイリーン・アムラオさんによると、10年前に地元漁師が発見したもの。漁師はその価値に気づかず、幸運のお守りとして大事にしていたという。「持ち込まれたときはびっくりした」とアムラオさんは地元メディアに話した。
真珠は、横61センチ縦30センチ。これまで世界最大とされてきた「老子の真珠」は重さ6.4キロなので、今回の34キロの真珠はそれをはるかにしのぐ。(BBC News)
http://www.bbc.com/japanese/37171869

 本当に真珠なのか疑問を抱いてしまうのは画像の物体が輝いていないからに違いない。一般的に貝の体内から生まれた宝石が真珠なのだけれども、厳密には「生きた貝の体内でつくられた真珠層からなる珠」、これが真珠の定義となる。真珠層構造があってこその輝きだからだ。

真珠は海の宝石として評価されるが、その宝石を作り出す真珠養殖業は産業分類ではなぜか水産業に含まれる。
水産物としての真珠は「生きた貝の体内でつくられた真珠層からなる珠」と定義されている。
だから、たとえばハマグリの体内から丸い珠が発見されたとしても、正確な意味ではそれは真珠と言えないことになる。
なぜならハマグリの貝殻は真珠層とは違った構造になっていて、貝がらの内側に光沢はない。
したがって、外套膜からの分泌液が結晶してできた珠は見た目も構造も貝殻と同じで白っぽい色をしている。こういう場合にもふつうは「ハマグリの真珠」と言い習わしているが、正確には「ハマグリの真珠様(よう)物質」と呼ぶのが、科学的態度となるのだろう。

 「真珠の博物誌 松月清郎」より

 松月清郎氏の言葉を借りるならば、

 オオシャコガイの体内から丸い珠が発見されてもそれは真珠ではなく、オオシャコガイの真珠様の物質である。

 丸くはない。そして真珠層がなく輝いていない。結論としては真珠とは呼びにくい。(真珠層を持たないコンクパール、メロパールという真珠がある。これは綺麗だから別格である。) 

 

ほんとに100億円?!

 新しく発見された真珠が100億円の価値とネット上でははやされているけれどその価値があるのかは不明だ。100億円は、今まで世界一の大きさと言われてきたアラーの真珠(老子の真珠)が35億円(3500万ドル)ということを根拠にしているようだ。重さが約5倍なら価格は少なくとも約3倍はするだろうと推測している。

世界最大の真珠と呼ばれたアラーの真珠(老子の真珠) 世界最大の真珠と呼ばれたアラーの真珠(老子の真珠)


 このアラーの真珠(老子の真珠)には様々な逸話がある。
 博物館展示中にリーという人物が現れて、この真珠は2500年前の老子が作らせた真珠だとして買取を提案したという話。
 オサマ・ビンラディンがほしがったという話。
 この真珠を巡って起きた殺人事件。等々。
 *http://www.pearl-guide.com/

 3500万ドルという現在の値付けはこれらの伝説・逸話込みの価格なのである。

今回、見つかった世界最大の真珠は、観光の目玉にするべくシティホールに展示されているという。
漁師が幸運のお守りとして10年間部屋に飾っていた、というだけでは宝石の伝説というにはあまりにしょぼすぎる。シティホールという舞台では、面白い逸話を生み出すことは期待できないかもしれない。インパクトのある買い手の登場を待ちたいところだ。

 ところで、去年の真珠のネックレスの史上最高落札価格が526万ドルだったというニュースがあった。その際に由緒の正しさが評価されていることを指摘したい。由緒正しい貴族や有名人に所有されることも価値の一つになるのだ。

 香港で開かれたサザビーズのオークションで7日、真珠のネックレスとサファイアの指輪が、史上最高落札価格を記録した。  (略)
 カルティエ製のナチュラルグレーパールの一連ネックレスの最終落札額は、526万ドル(6.3億円)。27.68カラットのサファイアとダイヤの指輪「カシミアの宝石」は670万ドル(8億円)で落札され、サファイア1カラット当たり史上最高額を更新した。

   *http://www.excite.co.jp/News/world_g/20151008/ReuterVideo_43339.html

 このネックレスは2012年に英ロンドン(London)でクリスティーズ(Christie's)でオークションにかけられた際にも、天然のグレーパールとしては史上最高の335万ドル(約4億円)で落札された。 (略)  サザビーズのアジア地区副代表を務める郭進耀(Quek Chin Yeow)氏は、「天然の海水グレーパールがオークションに出されることは珍しく、しかも貴族に所有されていた42粒の最高級グレーパールのネックレスとなれば、現存する類似品の中でも間違いなく最高の逸品」だとしている。
 このネックレスについてはスイス・ジェモロジカル・インスティテュート(SSEF)も、由緒の正しさがしっかり文書化されている点で「傑出している」と評価していると、サザビーズは紹介している。

  http://www.afpbb.com/articles/modepress/3060231?pid=16501402

高級かつ最も希少なグレーパールネックレス 天然海水グレーパール42粒をあしらった「カルティエ(Cartier)」製で、「最高級かつ最も希少なグレーパールネックレスの一つ」
http://www.afpbb.com/

 

参考

パラワンニュースのサイトは
*http://palawan-news.com/

*ウィキペディア 老子の真珠

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