真珠養殖歳時記 珠入れ(たまいれ)
今回は、真珠養殖のカナメの挿核の話をしたいと思います。
挿核は「核入れ」、「珠入れ」とも「オペ」ともいいます。
特に正式な呼び方はありませんから、私は「珠入れ」と呼びたいと思います。
私の家ではそう呼んでましたね。
珠入れは、真珠養殖が産業として軌道に乗り始めた頃、大正時代でしょうか。
この頃は、まだ、珠入れの技術は秘伝中の秘伝だったんですよ。
珠入れ場は、しっかり雨戸を閉めて、赤の他人は入れずに、こっそり行う、
というのが黎明期の珠入れだったといいます。
今は三重県鳥羽市のミキモト真珠島なんかで実演していますけど。
↓昭和初期の頃の挿核風景の写真です。
ここで、私が、その秘伝!!を公開します。
天然真珠は何故できるか?
という問いに、昔の多くの人々の考えはこうでした。
「貝の体内に異物(石や寄生虫)がはいると、その異物を自分が痛くないように、
コーティングする。それが真珠である。」
間違いです。
一番のポイントは「細胞」と真珠業者が呼んでいる、外套膜の切片なのです。
外套膜というのは貝殻をつくって貝本体を守る役割をしています。
ホタテに例えるとひもと呼ばれる部分です。
(画像)www.ajisaikan.com/htmls/recipe_ho.html
真珠貝のひも(外套膜)は
貝殻の茶色い外側をつくり、さらに内側のきらきらした部分もつくります。
きらきらした貝殻を作る部分が、たまたま貝の体内に入って、
たまたま体内で貝殻と同じ成分の丸いものをつくってしまう。それが真珠です。
(たまたまが続けて起こらないと真珠ができませんから、ほんとに貴重なものだったんですね。)
その時には外套膜は分裂して真珠をくるむ袋になっています。その袋が真珠袋。
現在は核(貝殻を削って球にしたもの)と外套膜を小さくカットしたもの一緒に貝の体内に挿入します。
核は芯ですね。貝の体内に芯だけいれても真珠にならない。
核(異物)と外套膜を一緒に体内にいれる。
これこそが日本の真珠養殖の秘伝(特許が取得された)だったのです。
ここで確認しておきたいのは
真珠養殖は、たまたまという偶然を排除しただけでメカニズムは天然真珠のままということなのです。
それが養殖真珠が宝石の仲間入りをしている理由です。
この「外套膜=細胞」からどの部分をとれば花珠をつくるのは花珠の出現率が多くなるのか?
なんていうことは、現在の真珠養殖業者は常に研究していて、みんな一家言持ってますよ。
ちょうど、いまが珠入れの真っ最中です。木製の栓をさして、珠入れを待つ貝。