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TASAKI田崎真珠復活の話と日本のアコヤ真珠養殖場。

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・・・・TASAKI(田崎真珠)については12月13日に決算が出てからあーだこーだ書こうと思ったんだけれど、今書く。

去年の58期のTASAKIの決算書にはこういう注記がある。TASAKIは去年の9月10日に正式に外資系ファンドの傘下で無くなったわけである。

親会社または重要な関連会社に関する注記

(1)親会社情報

親会社でありましたOCEAN PEARL INVESTMENT LIMITEDから平成27年9月10日付で大量保有報告書の変更報告書の提出があり、当社の親会社には該当しないこととなりました。

 

2008年。OCEAN PEARL INVESTMENT LIMITED=投資会社MBKは、新株を引き受ける形で田崎真珠に70億円を出した。 引き受けた株は議決権はないが1株を4株の普通株式に転換出来るという特別な株だった。

TASAKIの業績が復活した時(株価が上がった時)にファンドが4株に転換したのが下の表からわかる。転換して売ったときには株価も上がっていたのでファンドは利益を手にした。

TASAKIの株価(売却価格の平均)×1400万株-70億円=???(計算は略)がファンドの利益だろう。しかし7年間かかっているので、それほど大儲けではないらしい。


◇OCEAN PEARL INVESTMENT LIMITEDの株式保有履歴。

OCTOBER 2008 Investment Date OCEAN PEARL INVESTMENT LIMITEDの大量保有履歴
  2013/06/01 TASAKI 350万株 48.07%
  2015/06/12 TASAKI 1400万株 78.74% (4株に転換)
  2015/08/05 TASAKI 100万株  5.62%
  2015/09/04 TASAKI 53万株  3%
https://irbank.net/

◇養殖場開設

今年の2月に新規に養殖場を開いたというニュース「TASAKI、三重県に新たな真珠養殖場を開設」を読んだ。


おいおい、ファンドがいなくなったら、すぐ、そうくるか。
と思ったのだが、
他のニュースを見てみても、新規養殖場開設に好意的だった。新しい養殖場は伊勢志摩真珠養殖場という名前だというし、ブランドのイメージ戦略の部分もあるのかもしれない。
昨年度のTASAKIの決算を確認するとアコヤ真珠のネックレス・バラ珠の加工実績が前年度比25%と激減している。実際、アコヤ真珠は品薄なのだろう。

 

◇TASAKIのファンドによる再生はこういう経緯だった。

2008年。赤字続きの田崎真珠(2012年に社名をTASAKIに変更)に投資ファンドMBKが出資する。

再建策はお決まりの、資産売却と不採算部門の閉鎖である。不採算部門とは真珠養殖場。国内外にある9か所の養殖場のうち7つを閉鎖することなる。日本国内の養殖場は九州佐世保の九十九島養殖場の1か所になった。残り1か所はミャンマーだ。
*ちなみにミャンマーの養殖場も拡張の予定がある模様。(過去記事ミャンマー関連のエントリー参照のこと。)

そしてラグジュアリーブランドを目指してのブランド力強化、デザインの一新をすすめる。

2013年度、TASAKIの営業利益はプラスに。株価は順調に上昇。2015年にファンドは持ち株を売却し投資を回収。

2015年9月。冒頭に書いたようにOCEAN PEARL INVESTMENT LIMITEDは親会社ではなくなった。

 

そして、翌年2016年の新規養殖場開設の発表。それをTASAKIのアコヤ真珠養殖復活のニュースと私は捉えたのだが実際はどうなのだろうか。

 

◇日経ビジネスオンライン さらば「ダサい真珠」

今年の1月6日。日経ビジネスオンラインに 復活TASAKI、さらば「ダサい真珠」 というタイトルの記事が出た。

外資の資金を受け入れたTASAKIが見事(教科書通り)に復活した。その経緯を解説している。

復活TASAKI、さらば「ダサい真珠」
時代の流れに対応しきれず、過去のビジネスモデルを転換できなかったTASAKI。冠婚葬祭以外の需要が見込めなかった真珠に、新しい命を吹き込んだ。 「教科書通り」ともいえるブランド再生ストーリーのきっかけは、ファンドの出資だった。 日経ビジネスオンライン

*ファンド=MBKはユニバーサルスタジオジャパンや喫茶チェーンのコメダにも投資している。

真珠価格は日本だけでなく世界経済の好況不況に大きく左右される。冠婚葬祭以外の需要が見込めなかったのは国内のアコヤ真珠ネックレスに限っての話だから、若干違和感がある見出しだ。けれど、時代の流れに対応しきれなかったというのは確かなのだろう。

*ちなみに日経ビジネスオンライン記事の真珠輸出数量と金額グラフの解説はかなり??だ。グラフの山と谷のピークは米国の株価指数のピークと重なる。やはり景気の影響が大きい。また2000年からの大きな下落は香港に真珠マーケットが移っていったからではないだろうか?2008年からの下げはリーマンショックの影響だ。

TASAKIの過去のビジネスモデルとは、記事によれば「品質と生産へのこだわり」ということらしい。

高品質のアコヤ真珠を確保しておけば、いつか真珠価格は値上がりし、利益を生み出す。というわけなのだが。1990年代後半から、真珠=アコヤの時代は終わる。タヒチ黒蝶真珠や南洋白蝶真珠のブームが来た。中国産淡水真珠の品質も向上した。

タヒチ黒蝶真珠、南洋白蝶真珠、中国の淡水真珠が世界の真珠マーケットに受け入れられ、アコヤ真珠の市場シェアが落ちていったということが、日本の真珠価格が下がっていった背景だと思う。しかし田崎真珠はアコヤ真珠養殖場を縮小しなかった。

田崎真珠のビジネスモデルは、養殖場から大量に揚がってくる在庫のうち、グレードの高いものを田崎真珠の小売り用に使い、それ以外は卸で売る。卸売りは、最盛期は同社の売上高の6割を占めた重要部門だった。(日経ビジネスオンライン)
品質や生産にこだわり続けてきた経営陣は元凶である養殖場の生産過剰にメスを入れられなかった。(日経ビジネスオンライン)
利益を押し下げる在庫に、養殖場の人件費や生産設備のコスト──。このままの状態を放置すれば、会社の将来は目に見えていた。(日経ビジネスオンライン)

真珠養殖、けちょんけちょんである。 考えてみれば、これは創業(過去に利益を上げた)の業種を切れないという日本企業にありがちな典型的な話なのだとも思う。日経ビジネスが 「教科書通り」という語句を使っている。企業再生の教科書に乗っているような典型的ケースなのだ。

どの製造業でも生産調整と在庫のコントロールが肝心だが、生産に最低でも1年~2年かかる真珠養殖では、市場動向をにらみながらの生産調整は難しい。気候によっても真珠の生産高は上下する。真珠養殖にも豊作年と不作年があるのだ。不作に備えて、バッファとしての在庫はほしい。しかし需要以上に豊作になれば在庫が積み上がってしまう。市場の流行もある。

話は戻って、今年2月に養殖場を開設したということで、TASAKIの今後の在庫の動きや、真珠養殖場の生産動向を注視したいと思う。決算発表は12月13日だ。

ちなみに前年度の決算では「卸売り部門の売上は売上高トータルの14%」になっている。「最盛期の売上高の6割」からは随分低下した。

 

TASAKIはラグジュアリーブランドを目指して海外のデザイナーを起用。斬新。下画像のネックレスは11~12ミリの淡水真珠を使用しているようだ。ブランド力があればアコヤ真珠に拘る必要もなくなるのだろう。しかし、ブランド価値を含むとは言え、淡水真珠も丸型で11ミリともなれば高価格だなあ。

TASAKI ドリルド ネックレス TASAKI ドリルド ネックレス。¥1,350,000!http://www.tasaki.co.jp/

 

 

補足

*TASAKIの10年チャート。2015年に急上昇したところでファンドが普通株に転換して売却。株価は希薄化により激下げ。、

TASAKIの株価推移 TASAKIの株価推移

*田崎真珠は上場企業なので業績等が公開されている。

http://www.tasaki.co.jp/corporate/ir/

*MBKパートナーズ

MBKパートナーズ株式会社
米カーライル・グループ出身者6名によって設立された、東京、ソウル、香港、上海を拠点に活動する独立系プライベートエクイティファンド。社名のMBKは、創設者のひとりで代表者であるMichael ByungJu Kim氏の名前からとられている。運用資産総額は約100億ドル、インベストメント・プロフェッショナルはグローバルで38名を擁し、東京オフィスにはそのうち9名が在籍している。在籍者の前職はマッキンゼー、メリルリンチ、EYなどさまざま。日本ではこれまでに弥生、ユニバーサルスタジオジャパン、田崎真珠、インボイスへの投資実績があり、2012年12月には名古屋に本拠を置く大手喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」をアドバンテッジ・パートナーズから買収したことで話題を集めた。

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