
日本との競争に敗れ衰退、(略)復活を目指す香港??という若干謎タイトルの記事。香港真珠養殖は儲かるのだろうか?
という6月30日の記事。
私が6月26日に真珠を珠江デルタに戻す男の話というエントリーで香港の真珠養殖の記事を紹介したのですが、その記事の日本語訳がでたらしい。
私の感想と随分ニュアンスが違う事にびっくりです。。
【6月30日 AFP】香港東部沖のいかだの上で、元投資銀行家ヤン・ワタット(Yan Wa-tat)さん(58)が2000個ほどの貝から根気強くフジツボをこすり落としていく。骨の折れる作業だが、香港の真珠養殖を復活させるという使命を実現するには、この作業が不可欠だ。
「この種(の貝)は香港にかつて豊富にあった」とヤンさん。香港の真珠採取の歴史は1000年以上に及ぶが、乱獲により今ではわずかしか残っていないと嘆く。
この記事は歴史のある香港の真珠養殖の復活という筋書きなんですが、香港にかって豊富にあった貝から採れた真珠と言えば当然天然真珠の事なので、真珠養殖を復活させるというと少し変に感じます。どうしても、ちぐはぐな印象をうけます。
また、記事内では「香港では1950年代に養殖企業数社が出てきた」とあります。たった数社です!!つまり、「日本との競争に敗れ衰退」もかなり盛ってる気がするわけです。当時は競争するまでもなく、養殖真珠は日本一強でした。
真珠貝は「乱獲により今ではわずかしか残っていない」とあります。この乱獲は天然真珠採取のせいでしょう。
思い出されるのは御木本幸吉です。
19世紀後半の日本でも同じように天然真珠採取目的の乱獲があり、真珠貝(アコヤガイ)の数が激減しました。
そこにビジネスチャンスを見た御木本幸吉が、真珠貝養殖事業を始めたのが1888年。最初にはじめた事業は真珠養殖ではなく真珠貝の養殖です。
その後に御木本幸吉は事業目的を真珠養殖に転換します。
(略)食用海産物の場合は養殖の成功は、直ちに事業の成功につながるが、真珠貝の場合は事業の成功に直結するものではないということである。すなわち真珠貝は真珠を生み出す可能性をもつにしかすぎない。数百個の、いや時には1000個の母貝から一粒という確率であり、しかもその一粒が、かならず宝石的価値を持つ商品になるとはかぎらない。
そのうえ漁場の使用料、労働賃金その他材料費・維持費を考えたとき、母貝養殖の成功が、そのまま幸吉のはじめに意図した営利的事業としてなりたつものではない。(大林日出雄著「御木本幸吉」より)
真珠貝の養殖では儲からないから事業を変更したわけです。さすが。
枯渇しかけた真珠貝の復活を目指すだけではだめで、儲けがでなければいけません。
最後に勘違いしやすい、この数字の部分。
レオンさんは約3万個のアコヤガイを養殖しており、真珠1粒当たり100香港ドル(約1380円)で売れると話す。また、宝飾品の基準に満たない真珠は、貝とともに中国伝統薬や化粧品用の真珠パウダーとして売ることができるという。
「真珠1粒当たり100香港ドル(約1380円)で売れる」という部分から、
3万個×1380円=約5000万円の売り上げ
のように思いがちですが、品質の良い何割かが真珠1粒当たり100香港ドルで売れるということ。
また、3万個すべてが母貝(挿核前)の数なら、最終的に(挿核後)生き残るのは6割の1万8000個くらい。6割残ればまずまずの好成績でしょう。そして残った真珠貝から取り出した真珠の品質により売り上げが決まります。「宝飾品の基準に満たない真珠」が多くでれば赤字になります。
売り上げはいくらになるでしょうか?儲けはでるでしょうか?
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