
朝日新聞記事「ふた夏の眠り、真珠が生まれる瞬間」で考える。宇和島の越物大珠戦略!?!
2018年9月15日の朝日新聞デジタルの記事「時紀行」で宇和島の真珠養殖が取り上げられていた。
会員向け記事なので全文は読めてない。記事は二つのパートに分かれている。
時紀行 日本一のアコヤ真珠生産量を誇る愛媛県。その中でも、宇和島市が中心産地だ。乱獲による天然稚貝の激減、病気による母貝の大量死……。幾つもの危機を乗り越えてきた産地を西日本豪雨が襲った。
タイトルに「ふた夏の眠り」とあるのは、取材した真珠養殖業者の木下さんが越物(こしもの)の真珠を作っているから。越物は養殖期間が長く夏を二回過ごすのである。(夏に真珠が眠ってるわけではないけど。)
越物は真珠層が厚く巻き付いた希少な高級品だが、養殖期間が長いと貝が死んだり真珠が変形したりするリスクも高まる。核を入れて1年での出荷が主流の中で、決して割がいいとはいえない。それなのに、なぜ越物を? 「やっぱり、厚く巻いたきれいな珠(たま)をつくりたいですから」と言った。
「厚く巻いたきれいな珠をつくりたい」とは、とにかく高く売れる真珠を作りたいということだろう。ハイリスク・ハイリターンというだけの話。
綺麗な越物の大珠(8.5~9ミリ台かな?)を生産して、貝まわり(1貝あたり売上)を最大化する戦略なのだ。綺麗な真珠であれば価格があがり、サイズが大きければ価格があがる、厚い巻きは一粒あたりの重量が増えるのでさらに金額は伸びることになる。(浜揚げした真珠は重さで売買される。)
※ 大珠と対照的なのが三重県の厘玉(りんだま)・細厘玉(さいりんだま)。厘玉・細厘玉と呼ばれる5ミリ未満の真珠は、挿核時に大きな貝が必要なく、挿核後の斃死率も低い。大珠は一つのアコヤガイにつき一つの真珠になるが、細厘珠は5~6個。生産総量が少なく希少価値があるので価格も高い。
養殖業者の方たちはそもそも、母貝養殖と真珠養殖で分かれている。宇和島では「母貝屋さん」「玉入れ屋さん」と呼んでいた。
真珠養殖業者自体の数が減っているため、母貝を供給する母貝屋さんも減っている。そのため良い母貝の入手がしづらくなっているという。自社で母貝養殖をする玉入れ屋さんもいる。これから母貝養殖と真珠養殖の分業は崩れていくかもしれない。
大珠を目指すとなると大きい母貝がたくさん必要だ。記事中には「買った母貝のうち挿核できるのが7割ほど」とある。記事には書いていないかが、挿核するには貝が小さく、結果的に使用率が7割になるのだろうか。
さて、記事では真珠養殖の作業をレポートしているのだが。
一方で、こうした作業の方法も、それぞれの考え方によって違う。経験と勘でやってきた世界で、進化の余地がたくさんあるのではないかと感じた。
と記事にある。
進化の余地がたくさんあるのでは?と書くのは簡単だ。が、今、事業として成立しているということは、「経験と勘」だけでやってきたのではないと考える。
進化しない「経験と勘」の真珠養殖業者が、今の厳しい時代に生き残ることはできないとも思う。
現在は半数近い真珠養殖業者が十分な利益を出せていないという話もある。今回の豪雨被害の影響で、また真珠養殖業者は減るのではないだろうか。
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